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こんにちは、ほぼ日の菅野(すがの)です。灼熱の毎日ですが、ほんのわずかだけ秋が近づいてきたでしょうか。この写真は先週の雷雨の際、ほぼ日の窓から雨を撮ったものです。 2週間ぶりのほぼ日通信WEEKLY、第8号をお届けいたします。 今週から巻頭エッセイのコーナがはじまります。「お気に入り」をテーマに、さまざまな方がリレーのように書いてくださいます。初回は私の憧れの松家仁之さんにご執筆いただきました。
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| ほぼ日通信WEEKLYだけのよみものです。 |
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| ~巻頭エッセイ~ 第1回 |
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ガーシュウィンの歌
歌がないと生きていけません。ただし「歌う」のではなく、「聴く」ものとして。 繰りかえしずっと聴いてきた歌が、すっかりからだに滲みこんでいるので、近所の蕎麦屋に歩いていく途中とか、お風呂につかっているときとか、寝つきの悪い夜とか、ふいに頭のなかに歌がよみがえります。それが私の普通の日常です。 「頭のなかに聴こえる歌」選手権があったら、決勝戦に残るのは私の場合、ビートルズとガーシュウィン。そしてガーシュウィンの歌なら、エラ・フィッツジェラルドの 「ガーシュウィン・ソングブック」ということになります。 高校時代に3枚組のLPで買って聴いたのが最初。CDになったらCDで、最近はamazon musicにもつないで聴いています。まったく飽きません。変わらずエラ・フィッツジェラルドの歌声のとりこです。録音されたのは1958年から59年にかけてなので、彼女が40歳になったばかりの頃の録音。演奏もすばらしい。 ビリー・ホリデイという人もいます。凄いとしか言いようがない歌手ですけれど、ちょっと凄すぎる。マッチの火を両手で囲むような、アチチ、という感触がある。エラ・フィッツジェラルドの歌は凄いというのではなくて、のびのびする感じ。彼女の声はどこか笑顔です。冬の夜、上等な毛布に包まれる感覚といえばいいでしょうか。 たとえば有名な曲でいうと、「BUT NOT FOR ME」とか「’S WONDERFUL」とか「SOMEONE TO WATCH OVER ME」とか、のちにスタンダード・ナンバーといわれることになる歌ばかりです。もともとミュージカルや映画のために書かれたもの。どういう歌かといえば、恋する気持ち、みたいなものを、手を替え品を替え、歌っている。洒落た包装紙=歌詞でくるんで、リボンをかけて、「どうぞ」と笑顔で手渡してくれる。 もちろん苦味とか哀しみもまじります。人はけっきょく、ひと り。感情も、ひとりのもの。ガーシュウィンにはなにより個人を尊ぶ考えがこころの底のほうにあって、だからこそ手をつないだり抱きしめたりする歓びが生まれる、という世界観があるように思います。20世紀前半のアメリカでは、誰もが信じることのできる感覚だったのかもしれません。もちろん、いまもそう信じる人は少なくないはずですが。 私が小説書きとして書き終えたばかりの『泡』という作品は、呑気症の(無意識に空気を呑んでしまうため、たくさんおならが出る)男子高校生を主人公にしました。年上の男性が生きあぐねる様子の彼に、それとなく「ガーシュウィン・ソングブック 」を聴かせる場面があります。エラ・フィッツジェラルドが少女だった頃、いかに過酷な環境を生きていたか、少しだけ触れたりもしながら。 エラ・フィッツジェラルドの歌声は笑顔ですが、じつは歌うことによって、ぎりぎりのところで生き延びた人なんですね。 まついえ まさし 1958年東京生まれ。小説家。 本文で触れた小説『泡』は、「すばる」10月号(9月5日発売)に掲載予定。長篇小説『天使も踏むを畏れるところ』を「新潮」に連載中。こちらは、皇居新宮殿がどのようにして建てられていったか、という史実に基づいたフィクション。
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| 今週の一枚 神さまが見逃さなかった人。
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アートディレクターの秋山具義(あきやま ぐぎ)さん。ほぼ日は誕生のときから現在に至るまでいろんなところでお世話になっています。ほぼ日の「おさる」の生みの親。秋葉原生まれ。来週から「神ブラ」のコーナーで神田をいっしょに散歩してくださいます。今日は予告がわりにご登場いただきました。なぜこのポーズなのかは、本編をおたのしみに。秋山さんの生まれ育った地で、少年時代の話を聞いているうち、現在の「秋山具義」さんに至る道のりが見えてきました。どんなに隠れていたとしても、神さまはアッキィさんを見逃さない。ほんとうにそうなんです。来週からおたのしみに。
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| 最近の「今日のダーリン」をご紹介 糸井重里が書くほぼ日目次ページのエッセイです。
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まったくもう、俺ったら!
昨日、雑誌「Number」創刊1000号を記念したトークイベントがあったんですよ。今年ならではの事情で、ライブの開催ができなくて、たしか4月に予定されていたはずのイベントを、ネット配信のスタイルでやることになったわけです。司会が生島淳さんで、ラグビーのことを話す時間。2015年「ブライトンの奇跡」出場選手の真壁伸弥さん、2019年ワールドカップベスト8進出の中村亮土選手、そこに、不肖糸井重里がおじゃまして、たのしくラグビーのおしゃべりをする時間がありました。 生のラグビー観戦からは遠ざかってますし、リアルな戦いのフィールドを知っている方と、生々しいラグビーの話を聞くのは、実にたのしかった。まだまだ話したりないかなというあたりで締めに入って、生島さんが、ぼくに訊いてくれたんです。
「イトイさん、監督をやれるとしたら、野球と、ラグビーと、どっちがやりたいですか?」
これはこれで、会話のゲームなんですよね。それを語りあって遊べばいいんですが、そういうとき、ぼくは、 「それはもう、あの、あり得ないんで…。考えることも無理ですし…あのあの…」 質問に答えて遊ぶのではなく、いわばね、「その質問には答えられません!」と、野暮なというか、無粋なというか、そういうことを言っちゃったわけです。
まったくもう、俺ったらです。ぼくが野球だとかラグビーだとかの監督をやれたら? それはひとつのファンタジーです、ロマンです。そういう話をしてたのしもうっていうときに、「あり得ないんで…」って(そんなん知ってるわい)! 本気になってるんですよ、その仮定の話のことを。「やっぱり監督というのも、技術ですから」とか(なにを釈迦に説法みたいなことを言ってんねん?)。「マジみたいに言ってることのほうがヘンや!」そういうツッコミを、後でじぶんでしてるくらいなのに、「監督とか、あり得ないし…無理です」と、なんで言う? もっとこどものころは、こうじゃなかったんだけどなぁ。年を取ってから「マジの世界」を覚えちゃったのかな…。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。実際のぼくは、嘘もデタラメも冗談も大好きなんですが…。
――2020年8月20日の今日のダーリンより
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| 糸井重里のひとことあとがき |
この日の「今日のダーリン」を読んで、ぼくが野球やラグビーの世界の人びとを心から尊敬しているから「とと、とんでもない」と謙虚な姿勢で「あり得ないんで…」と遠慮してしまったと読んでくださった方も、たくさんいたと思います。 それはそれで正解というか、そうではあるのです。ただ、その謙虚さの「表裏(おもてうら)」なこころもあるわけでして。ぼくは、「(どんなことでも、できるものなら)ほんとにやりたい」と超生意気なことを、ひっきりなしに考えているのです。 「ほんとにやる」をいつもイメージしてないと、リアル(ほんとに生きてるいま現在のこの場所)の世界のことが「とっくにわかってた」ようなつまらないところに落ち着いちゃうからだと思うんです。でも、それがふと漏れたりすると、とても恥ずかしいので、「俺ったら!」となっちゃうんです。 (糸井重里)
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今日の「今日のダーリン」もぜひごらんください。 ※糸井重里の「今日のダーリン」は、ほぼ日刊イトイ新聞で毎日更新しています。 |
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| 今週の一枚 ほぼ日の乗組員を紹介します。 |
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ほぼ日手帳チームの星野。通称ほっしー。デザイナーであり、ほぼ日手帳チームのリーダー。私(菅野)は「こんな人がこの世にいるのか! 東京ってすごい」と驚かされた人が数名いるのですが、星野はそのひとり。いい仕事をし、努力家で謙虚でやりたいことがあって、熱心で明るく魅力的。他人の目がオフのときもオンのときも同じテンション。家にいるときもこのままの人なんだろう。9月1日発売開始の「ほぼ日手帳2021」のテーマは「handwrite/人は、書く。」星野率いるチームが力いっぱいお届けしている全ラインナップをどうぞ。来年1年、いっしょにすごす手帳を見つけてください。
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| 最近のほぼ日、どうなってる? |
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いまのほぼ日、おすすめの記事 しずかな読みものと、うれしい迷宮ミクニッツ。
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| 極夜は明けて。ほぼ日の奥野によるインタビューシリーズ「挑む人たち。」の幕があきました。最初に登場するのは探検家の角幡唯介さん。極地にひとりでおもむく話を読み、雪原の写真を見ていると、外で蝉がミンミン鳴いていようが、乗っている電車がガタンゴトンしていようが、頭がしーんとなります。そして、読む者のなかからも、熱い気持ちがどんどんふくれあがるのです。
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| | Miknits2020 ニットデザイナー三國万里子さんの編みものキット「Miknits」が昨日より販売開始。今年はいろんなたのしみかたができるように「毛糸+編み図」「毛糸+針+編み図+読みもの」「毛糸のみ(本は別売)」の3バージョンあり。迷っちゃうけど、やっぱり「編みたいものはどれ?」と、デザインで選んじゃお! ※soldoutの商品がありますが、再販予定もあります。
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| ほぼ日通信WEEKLYだけの特典 ホワイトボードカレンダーの割引とひきだしポーチプレゼント! |
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| 乗組員のおすすめグッズ
ほぼ日スタッフが本気で使いこんでいる商品をプレゼント。 |
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ひきだしポーチ・姉 スーツファブリックジェントルチェック
推薦人:ほぼ日クラモチ
ひきだしポーチ、私はすっごく便利に使ってます。この「姉」は中が「じゃばら」になっているので、お財布としても使えるし、持ち歩きたいものをどんどん入れられます。私はふだん「姉」にほぼ日手帳やペン、名刺を入れて、打ち合わせにこれひとつで行けるようにしています。そしてさらに、お化粧直しができるように、リップやあぶらとり紙も入ってます。「姉」を使ったことのない方、ぜひ使ってみてほしい。イチオシです。
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| 「ひきだしポーチ・姉」をプレゼントします。 |
今週のプレゼントは「ひきだしポーチ・姉 スーツファブリックジェントルチェック」です。机の引き出しを持ち歩くように、必要なものをつめこんでお出かけください。 下の青いボタンをクリックし、メールアドレスを記入してお申し込みください。抽選で10名さまにお送りします。 プレゼント申込〆切:2020年8月31日(月)23:59※ボタンをクリックすると株式会社ほぼ日で作成したgoogleフォームにジャンプします。当選された方にはほぼ日からメールでご連絡します。当選者の発表、落選のご連絡はいたしません。 |
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| 今週のおたより |
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前回まで連載していた「神ブラ」コーナーには、落語家の柳家喬太郎さんにご登場いただきました。最終回に、ほんとうにたくさんの感想メールをいただきました。ありがとうございます。 柳家喬太郎さんの言葉に救われました。仕事と子育てでパンク寸前のところにコロナ禍の生活で、しらずしらず疲れが限界を超えてしまって仕事を辞めることになりました。 何をやるのも無感情のような、いままでに感じたことのない落ち込みの中で、なんのやる気も戻らない日々を送ることに価値があるんだろうかと思っていましたが、ほぼ日のメールだけは全て読むようにしてました。いつもどこかに気づきや引っ掛かりをもらえましたので。 今回は本当に救われました。『がんばって、死なないこと。』 『そのうち飽きる』ありがとうございました。がんばります。 (S)「神ブラ」も今回の冒頭の松家仁之さんのエッセイも、週に1回みなさんにどこかホッとひと息ついていただければと、テーマを選んだりお話を訊いたりします。ですので喬太郎さんにも「落ち込んだときにはどうしますか?」なんて訊きました。「落ち込んだときにどうするっかって? そんなのあーた、どうしようもないですよ」と返されたときはドキッとして、インタビュアーとしてとても興奮しました。 |
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松家仁之さんに導かれて、ガーシュウィンの書いた歌を聴いています。このエッセイシリーズのテーマは「お気に入りのもの」。松家さんが初回に音楽をとりあげてくださったことに「そうそう、そうですよ!」と、すごい納得感がありました。 しょぼくれてしまう夜が、私にはときおりあります。そんな何百もの夜を救ってくれたのは、高確率で音楽でした。いろんな国のいろんな時代の歌が手をひいて暗い夜から連れ出してくれました。耳から入ってくる音は、演奏者やミキサーがコントロールしています。こういう感じでこういう音で、弾きたい、聴かせたい。その思いが一音一音、からだの隅々に響きます。 私はいくつか楽器を演奏するのですが、音をコントロールするって、とてもむずかしいですよね。料理でもスポーツでも絵でもなんでもそうですが、やってみると極めるのはむずかしい。人に届けるときのコントロール加減が、信頼でありやさしさであり‥‥なんて思います。 次回は9月。また水曜日に、メールでお目にかかります。
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